映画「アルパカと眠りたい」有安監督インタビュー

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2023年11月25日(土)26日(日)の2日間、神戸インディペンデント映画祭2023にてアルパカをテーマにした映画が上映されました。
編集室は映画の上映会のチケットを取り、アルパカの映画「アルパカと眠りたい」を観にいってきました。

映画の監督・脚本・編集を務めたのは有安ありさん。
アルパカの映画を撮ろうと思ったきっかけや撮影のお話をうかがいました。

上映会の舞台挨拶の様子

アルパカと眠りたい

【あらすじ】
亮介は内向的な性格の小学3年生。毎晩、妹のいびきのせいで眠れない。
ある日、アルパカに安眠効果があることを知った亮介は、週末、家族とともに動物園に連れて行ってもらう。早く会いたいがあまり、一人でアルパカの元へ。そこで出会った人々と可愛い動物と家族の夏の思い出。

神戸短編プレミア部門上映作品
(「関西にもっと現場を」「監督と俳優に出会いを」「創作にチャレンジを」の三つの目的のもと、神戸から発信される新たな才能たちによる映画)

【監督】
有安あり

【スタッフ】
撮影:宮崎裕也
録音・音楽:湯浅一裕
助監督:小西イサオ、榎木友昭
制作:多田直 他
題字:郡實
コーディネーター:江夏香織

【キャスト】
池田橙哉、朽木彩織、谷野まりえ、古賀しのぶ、佐倉こうめ、杉山将生、谷進一、水野祐樹 他

【主なロケ地】
神崎農村公園ヨーデルの森、のじまスコーラ、さの小テラス

映画祭の若手監督枠として作品づくりを開始

編集室:5月ぐらいだと思うのですが、アルパカの映画を撮ります、という情報がX(ツイッター)で流れてきて(アルパカの映画!?)と気になっていました。
プレミア上映会で観ることができて嬉しいです。

有安監督:先日はご来場ありがとうございました。

編集室:有安監督は映像のお仕事をしていると伺いました。映画は今までに製作されていたんですか?

有安監督:映像の専門学校へ行って、卒業してからずっと映像の仕事をしています。普段は企業からの依頼や結婚式などが多いですね。 
映画は学生の時からつくっていたんですが、前作はコロナ禍より少し前に映画を撮ったので時間が空いているので、映画を撮る人という印象はなかったかもしれません。
インディペンデント映画祭の若手監督枠としてこんなに人を巻き込んで…というか大々的にオーディションをしてというのは初めてでした。今までは知人に声をかけて身内で作っていた感じなので。こんなにお金をかけて撮ったのは初めてですね。

編集室:映画祭の若手監督枠というのは、今回2作品だったのですがどのように選ばれるのですか?

有安監督:企画書を提出して審査が行われます。応募形式ですが、企画書段階で映画祭側と相談もしました。
この映画の主人公は小学3年生の男の子なんですが、じつは最初は「不眠症で悩むOL」が主人公だったんですよ。アルパカの映画でいくというのは決めていて、かわいい動物がテーマだったらもう一つ「かわいい」があるといいんじゃないかとアドバイスをもらって。
自主映画の主人公って高校生が多くて子供というのも珍しいので、挑戦してみてほしいという提案がありました。でも子役につてがないんですよ、と相談したら運営側が子役オーディションを開催してくれました。

編集室:映画祭側が企画の相談やオーディションの手助けをしてくれるんですね。良い仕組みですね。
オーディションはどんな感じで行われたんですか?

有安監督:この映画祭は知名度もあるので、応募者が多かったです。選ぶのも難しかったですね。演技力がみなさん高かったので。

編集室:どういうところを重視して選んだんですか?

有安監督:話の中心になる子役の演技力に関してはどの子もみんなあったので、いろんな指示を出した時の反応を見ていました。素直さがある子がいいなあと。
あとはオーディションでは事前に「動物が触れる人、アレルギーがない人」という条件を出していました。

主人公の池田橙哉さんは役柄と同じ小学3年生
妹役の朽木彩織さん

アルパカの映画を自分で撮ってみたい

編集室:さきほどのお話で、「アルパカの映画で行くというのは決めていた」とおっしゃっていたのですが、映画を作る際になぜ題材にアルパカを選ばれたのでしょう。

有安監督:兵庫県にあるヨーデルの森で別の用事で行った際に、出会ったアルパカが可愛くて。「そういえばアルパカの映画ってあまり無いなあ」とその時ふと思って、後日ヨーデルの森さんに「アルパカの映画を撮りたいんですが、撮影にご協力いただけませんか?」と打診しました。
その後神戸インディペンデント映画祭の企画枠に選んでいただいたのでヨーデルの森さんへご報告に行ってアルパカの映画をつくる流れになりました。

それに私自身が動物が好きで。家族みんな動物が好きなのでお正月は毎年恒例で動物園か水族館に行っているというのもありますね。

編集室:お正月に動物園ですか!

有安監督:そうなんです、一年のスタートは動物園って決まっているんです我が家は。
お正月ならではの看板とか立っていて楽しいですよ。次の正月も山口まで水族館に行く予定です。まあ、そういう環境で育ったので動物はとても好きだったのもアルパカを選んだ背景にありますね。

編集室:「アルパカと眠りたい」の制作はいつごろから始まったんですか?

有安監督:スケジュール的には6月に審査が通って、7月上旬にオーディション、下旬から撮影開始、9月にクランクアップという感じです。

もし神戸の映画祭がダメでもこの夏はアルパカの映画を撮ろうと思っていたのでヨーデルの森さんへ事前に連絡して5月に撮影していました。あれこれ撮ってあるので、もう1本できるくらいには素材がありますよ。

編集室:なるほど、今年はもうアルパカの映画を撮ろうと準備していたんですね。
スケジュールをお聞きすると短期間に集中して作っているんですね。

有安監督:短編映画にしては時間がかかっている方なんですよ。子役の拘束時間の配慮とか、遠方のロケ地なので移動時間があったり、夏の撮影なので熱中症に気をつけたりして。撮影時間は短めなのでその分制作期間が長くなりました。

編集室:今年の夏は暑かったですもんね。そういえばプレミア上映の舞台挨拶の時、演者さんからのコメントが「暑かった」と口々に言っていたのが印象的でした。

有安監督:ヨーデルの森さんのロケは8月上旬の撮影でした。とても暑い日でしたしね。
アルパカたちは日中は暑いので小屋から出さず、夕方に撮影をしていました。もうちょっと主人公とアルパカが触れ合うシーンが撮りたかったんですが、こんなに暑くてはね。

アルパカと手話

編集室:アルパカの映画を撮ると決まって、アルパカについて調べるのも大変だったんじゃないですか?

有安監督:短期間にアルパカのことをいっぱい調べましたよ。
図書館に行って動物関係の辞書のようなもので生態を調べたり、ネットで海外のアルパカの動画を見たり。
調べるといえば、わたしは手話を勉強していて、この作品にはろう者の俳優が出演しているので、ろう者に「アルパカ」って手話はあるのか聞いたら「無い」とおっしゃるんです。辞書で調べても無いし、通訳者にも聞いても無いから指文字でやるしかないと。アメリカ手話やブラジル手話とかスペイン手話はあるんですよ。調べきれてないだけかもしれませんが日本手話では無いようです。みんな、指文字でしたね。

編集室:日本でのアルパカの飼育が本格化してまだ30年も経ってないので、まだ無いかもしれませんね。この記事を見た方で情報をご存知の方はぜひ編集室までご一報ください。
今後ですが、「アルパカと眠りたい」はどこかで上映する予定はありますか?

有安監督:ロケ地になったヨーデルの森さんでも上映会をやってみたいなと思うんですが、まだ考え中ですね。
群れなすさんの全国アルパカマップに載ってる都道府県で上映するのもいいですね。
アルパカのことをまだよく知らない人にも観ていただいて、アルパカ界隈が盛り上がるといいなと思っています。

編集室:本当にそうですね。アルパカって知っているようでどんな生態なのかはあまり知らない動物だと思います。暑さにも弱く、皮膚も弱い方だし羊やヤギと同じような環境では飼えないとか、そういう真面目な話も文章だと広く伝わりにくいんですけど、映画のようにストーリーがあってエンターテイメント性があるコンテンツは楽しく広く知ってもらえそうです。

さらにアルパカでもう1本?

編集室:映画館などでの上映は予定にありますか?

有安監督:この映画は短編映画で上映時間が約30分なんですけどそれだと短いので、劇場で上映する場合は難しいそうで。映画館の方に聞いてみたら、アルパカ好きな人向けの映画をもう1本つくって2本立てでやってみたらと言われました。えっ!とびっくりしましたがそれはそれでアリかもなと。どんな話にしようかなあ。

編集室:不眠症のOLの話も良さそうですよ。同じ不眠症でも大人の場合はどんな行動するのかな?って気になります。

有安監督:本当ですか。大人と言えば、結婚式でリングベアラー(指輪を運んでくる人)をアルパカに頼んだのを実際に見たんですが、そういう話も楽しそうだなって。アルパカさんはこの結婚式をどう思っているのかとか。

編集室:えっ!まさかのアルパカ目線!?

一同笑

編集室:次回作が楽しみですね。

有安監督:ぜひどこか撮らせてもらえる施設がありましたらぜひお声掛けください。
それに上映会をさせてもらえそうな所も募集中です。

編集室:映画が気になる、観てみたいという声も届いていますので、ぜひ実現してほしいですね。
群れなすも協力します!日本中のアルパカ好きのみなさんがこの映画を観ることができますように。
今日は長々とお時間をいただきありがとうございました。

有安監督:こちらこそありがとうございました。

DATA:

有安あり

兵庫県神戸市出身
2008年〜テレビ局でバイトしながら映像系の専門学校に通う。
卒業後、ビデオカメラマン・映像制作の仕事をしながら、【有安あり】名義で制作活動をしている。
[WEB] X@ariysan instagram@ariysan

アルパカと眠りたい
[公式WEB] [公式X@alpaca_movie]